忍者ブログ
月夜の庭月夜の庭
ぷちへぶんとは違ってゆずるの人格が少々破壊気味。 大人しくて礼儀正しい管理人だけが好きだって人は速やかに回れ右。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

今度は、偶然じゃない。

一週間前、この木製のドアを開けたのは通りがかりで、今日は必然。
どれほどか、胸を占めるあの一瞬の横顔に焦がれて、焦がれて。
気付けばあの夜、予想した通りに、あたしは店への道を辿っていた。

「いらっしゃいませ」
いくつかの声に迎えられ、カウンターに視線をやればそれは、あの日とほとんど変わらない、情景。
数人の女性は顔ぶれこそ違うけれど、やはりあの彼を囲んで笑っている。
気にしない素振りで彼等の前を過ぎる僅かに、チラリと視線を上げた彼が微笑んだ。

どくりと、血が騒ぐ、笑み。

何気ないフリで行くのが精一杯で、自分がどんな顔をしてるかなんて、わかりもしなかった。
ただ、平静を装った…つもりではいる。動揺は表していなかったと信じたい。
そうして、以前に座った奥のスツールまで進むと、全く同じに老バーテンダーが問うのだ。
「ご注文は?」
幾何学模様と店名が、鮮やかに印刷されたコースターに視線を奪われながら、返答もあの日と変わらず。
「…お任せで」

「お待たせ致しました」
ことりと置かれたカクテルグラスには、くすんだオレンジの液体が満たされて、僅かな間接照明に映える。
知らないカクテルだ。見たことがない、でも、おいしそう。
「これは?」
掲げたグラス越しに問うと彼は僅かに口角を上げて「ソウル・キスです」と。
「どなたか、思っている方がおいでで?何故か、あなたのお顔にそんなことを思ったものですから」

やはり客商売、侮れないわね。
応えることなく微笑んで、冷えたグラスに唇を寄せると、魂を一口啜り込む。
微かに流れる低い声だけが、この場を共有している証拠。
ここから動けないあたしは、あなたに決してとどかない。

でも、いいのよ。それでね。


www4.pf-x.net/~mikage/       ←配布元:TV様です

PR
ろくなこと思いつかないんだよ、このおにいさんは!

「う~ん、随分負けが込んだね、ゆかりちゃん」
「………そうですね」
睨んだってカードの数字が変わる訳じゃない。どう見たってこれは、見事な19連敗ってヤツだ。
「単純なゲームなんだけどね、ブラックジャックって」
「………すいませんね、足し算もろくにできませんで」
21に近づけること。こんなアホでも判るルールを知ってるからって、勝負運が上がるわけじゃない。
むしろ持って生まれたアンラッキーの星は、本日も頭上にて絶賛輝き中なんである。下手すりゃ当社比120%マシかもね、ははははは…。

日曜日の、とっても良いお天気に、なんでリビングに籠もってなんで面白くもないゲームに興じているのか。
吐息混じりにカードを山に戻しながら、私は事の起こりに思いを馳せてみた。
…まず、不用意におにいさんに声なんぞかけたのがまずかった。
『たまの休みなんだし、ちょっと休んだらどうですか』
朝早くから書斎で仕事をしていた人を心配してみたんだけど、それは自分の墓穴を掘ることに他ならず。
ドア越しに顔を覗かせた私を易々と捕らえた彼は、マジ楽しそうに言ったっけな。
『じゃ、お言葉に甘えて。ゆかりちゃん膝貸してね』

冗談ではありません。なんで膝枕?!恥ずかしいし、その手のスキンシップはお断りなんだから!
と、激しく抵抗してみたんだけど、なんでだかいつの間にか、トランプで勝ったら言うこと聞いてあげるなんて、理不尽な条件を付けられるに至りましてね…。
負けに負けたり19連敗の現状と相成るわけでございます。

「どうする?もう一勝負する?次勝てたら、これまでの分を無かったことにしてあげるよ」
「………いい加減、私だって学習するんです」
そう、この甘言に見事乗っかって、連敗記録を伸ばしていったのだ。そろそろ打ち止めにできなきゃ、人生が打ち止めになりそうなんで、首をふる。
ブンブンブンブン、千切れそうな勢いで強く否定。
「残念。もう何回分かは稼ぐつもりだったんだけどな」
やっぱりそんなつもりか!

睨み付けたこっちの内心を微笑みでかわして、おにいさんは素早く近づくと床に座り込んでいた私の膝を占領にかかる。
「え、い、もうですかっ」
「だって、すぐにも休んだ方がゆかりちゃんの希望に叶うでしょ」
「う、う~~~」
こうして、人の親切を逆手に取った彼は本気でころりと転がってしまったのだ。
「はは、気持ちいいね」
「そ、そうですかぁ…?」
引きつりつつ、この近さは反則だと早鐘を打つ心臓を押さえた。

思い出にするには悪夢のような一夜以来、同意の上で触れ合うのは初めてで、恐いような嬉しいような。
同居してからはおにいさんが信用に足る人物だと分かったけど、微妙に変化していく自分の気持ちに理性がついていかないのが本音。
嫌いじゃない、好きだけど、恋愛とのボーダーはすごく曖昧。
だから、無闇に触ったりしたくないの。せっかく見ないふりしてる何かが、活性化したらやっかいなんだもん。

「ね、ゆかりちゃん」
だけど、敵に容赦はない。
「一つ提案」
天使の如く微笑んで、悪魔の取引を持ちかける。
「2つ分の負けを、キス一つで消してあげる」
嫣然と、それは、ゆらゆら不安定だった気持ちを、揺さぶる強さで。
「そうして、そのまま唇を開くことができたら、負けを3つ。どう?膝枕も含めて一度に6つの負けが無くなるよ」
僅かの逡巡は、微かな抵抗。
そろり、触れた唇は、息がつまるほど、苦しくて。


www4.pf-x.net/~mikage/       ←配布元:TV様です
www4.pf-x.net/~mikage/       ←配布元:TV様です


よりお借りした、君を思う5つのお題より


1 息が、つまるほど
2 とどかない
3 けれどもこれは恋
4 手段は言葉だけじゃない
5 素直 

に挑戦。さて、できるかな。
因みに、そこはかとなくだーくへぶん風味(笑)。
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
[08/31 ゆずる]
[08/24 kei]
最新TB
プロフィール
HN:
No Name Ninja
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
Powerd by NINJAブログ / Designed by SUSH
Copyright © 月夜の庭 All Rights Reserved.
忍者ブログ [PR]